アレクサンダー・テクニーク

ATはどれくらいで習得できるか?——終わりのない探求について

「ATはどれくらいで習得できますか?」はよくある質問です。ただ、この問いへの答えは「人による」だけでは終わりません。ATとはそもそも何を習得するものなのか——そこから考えてみます。

「アレクサンダー・テクニーク、どれくらいで習得できますか?」

これはよく聞かれる質問です。正直に言うと、個人差がとても大きく、一概には言えません。でも、それだけで終わらせてしまうのももったいないので、もう少し掘り下げて考えてみたいと思います。


「直してもらおう」では変わらない

ATのレッスンを受ける方の中には、整体や接骨院に行くような感覚で来られる方もいます。「肩こりを直してもらいたい」「演奏の癖を治してもらいたい」——その気持ちは自然なことです。

ただ、ATはそういうアプローチではありません。

ATは、習慣的なパターンに『自分で気づく』ことを大切にしています。講師が「これが問題です、直しましょう」と修正してくれるワークではないのです。

「直してもらおう」というスタンスで受けると、何かが起きた気はするのに、なぜか変わらない——そういう体験になりやすいです。変化は、自分の中で気づきが起きたときに始まります。


「やり方を教えてもらう」も少し違います

もうひとつよくあるのが、「身体の正しい使い方を教えてもらおう」というスタンスです。

これも気持ちはよくわかります。ただ、「正しい動き方を覚える」アプローチは、新たな習慣を上から重ねていくことになりがちです。

ATが向かうのは、習慣的なパターンに気づき、それを手放していくこと。やり方を「足す」のではなく、余計にしていたことを「やめる」方向です。

何かを新たに覚えようとするのではなく、すでに起きていることを観察していく——このスタンスの違いが、体験の深さに影響してきます。


そもそも、習得とは何か

少し視点を変えてみましょう。

ドラムを「習得した」と言えるのは、どのレベルでしょうか? 基本的なリズムが叩けたら? 好きな曲が演奏できたら? プロとして舞台に立てたら?

おそらく、演奏を続けている方ほど、どこかに「まだまだだな」という感覚があるのではないでしょうか。上達するほど、自分に見えていなかったものが見えてくる。できることが増えるほど、次の深さに気づいていく。

ATも同じです。気づきを得ると、またそこから新たな気づきが生まれます。「在り方を観察する」という原理に終わりはなく、やればやるほど探求は深くなっていきます。

表現というのは、そういうものかもしれません。貪欲な人ほど、その深さに引き込まれていく。


「習得」より「自然になる」

では、ATを続けてどうなっていくのか。

目指すことがあるとすれば、ATの原理や考え方が『自然にできるようになる』ことだと思っています。

習慣的な反応に気づく。すぐに動かずに少し間を置く。今自分がどうしているかを観察する——これらが、意識しなくても自然と働くようになってくる。

「習得した」というより「馴染んできた」という感覚に近いかもしれません。そしてそこから、また新しいことが見えてくる。

一定のラインはあります。ただそれは、「ここまでできれば完成」というものではなく、「どこまで深めていくか」を自分が選んでいくものだと感じています。


焦らなくて大丈夫です

個人差が大きい、とあらためて言いましょう。

もともとの習慣の深さ、観察する力、どれだけ時間をかけるか——人それぞれです。早く変化を感じる方もいれば、じっくりと積み重ねていく方もいます。どちらが正しいということはありません。

大切なのは、「まだ習得していない」ではなく、「今、何に気づけているか」に目を向けることかもしれません。

それがATの、そして表現の続け方だと思っています。


ATの原理と実践については、書籍『アレクサンダーテクニーク+ドラム』で詳しく書いています。

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