「アレクサンダー・テクニーク、何回受ければ習得できますか?」
こう聞かれることがあります。そして実際、私のレッスンには、1回だけ受講して終える方が一定数います。
1回目のレッスンで伝えていること
私のレッスンでは、1回目にATの原理や概要を説明しながら、テーブルワークとチェアワークを体験していただくことが多いです。いわばATのチュートリアルです。この1回で、今後どんなことに取り組んでいくのか、そのイメージをつかんでいただく——そういう位置づけで指導しています。
1回だけで受講を終える方の中には、このイメージをつかんだことで満足される方もいれば、事情があって続けられない方もいます。どちらの受け取り方も、私は尊重しています。
それでも、実践は一度では難しい
ただ、正直にお伝えすると、ATは習慣と向き合うワークです。1回のレッスンで原理を理解することはできても、それを自分自身で実践していくのは簡単ではありません。
私自身、ATを習っていた頃、意味がわかってきたと感じられるようになったのはしばらく経ってからでした。頭で理解したつもりのことが、実際の体験として腑に落ちるまでには、時間がかかりました。
講師に「結果」が求められるという現実
インストラクターという立場にいると、指導には「結果」が求められます。
料金をいただいている以上、生徒さんが何かを得たいと思うのは自然なことです。私自身、その期待に応えたいという気持ちは常にあります。
ただ、ATのレッスンで生徒さんに渡せるものは、「結果」ではなく、取り組みそのもの——『プロセス』なのです。
並走するということ
生徒さんが何かに取り組んでいる時間を、「どこかに向かうまでの道のり」だとたとえてみます。
レッスンの時間、私がしているのは、その道のりを一緒に歩きながら「この方角を見てごらん、こんな景色があるんだね」「この道を右に曲がろうか」と誘導することです。ゴールまで運ぶことではなく、並走することに近いと感じています。
その中で「気づき」があればいいなとは思っています。ただ、何も見つからないレッスンもあります。
それは停滞ではなく、歩みの途中なだけです。
ATの原理は、この並走を重ねていくことで、体験を通して少しずつ学ばれていきます。
では、何回で習得できるのか
タイトルに反するようですが、正直にお答えします。
ATの原理を頭で理解する、ということに関しては、数回のレッスンでイメージはつかめると思います。ただ、それを体験を通して理解を深めていく工程には、終わりがありません。
講師である私自身も、いまだに探究と気づきの繰り返しです。
あえて「習得」というものを挙げるとすれば、ATの実践を一人で自走できるようになったとき——それが一つの目安になるのではないかと思っています。
その歩みの速さも深さも、あなた自身が決めていくものだと思います。
著書について
方法論として答えを示すのではなく、著者自身の気づきを読者が追体験していく一冊です。結果ではなくプロセスとして向き合うということが、体験を通じてイメージしていただけます。
→ ストアで見る
