ドラムのスティックワークは、右と左が交互に打つ「シングルストローク(RLRL…)」から始まります。シンプルに見えますが、均等なタイミング・均等な音量・コントロールされたダイナミクスの3つを同時に成立させることが、すべてのドラムテクニックの土台になります。
シングルストロークとは
右(R)と左(L)を交互に打ち続けるパターンです(R L R L…)。表記はシンプルですが、中に含まれる課題は奥深い。
3つの均等さ
タイミングの均等さ:右と左の間隔が常に等しいこと。片手がもたついたり、突っ込んだりしない。
音量の均等さ:右と左の音の大きさが揃っていること。多くの場合、利き手が大きくなりがちです。
ダイナミクスの均等さ:弱く叩くときも強く叩くときも、右左のバランスが崩れないこと。
この3つが揃ったとき、シングルストロークは「使える武器」になります。
リズムコントロール:音符を切り替える
シングルストロークの練習で最も重要なのが、音符の種類を切り替えながら正確さを保つ練習です。
同じBPM・同じパッド上で、4分→8分→16分と音符の密度を変えます。テンポを変えずに密度だけが変わる。これはサブディビジョンの考え方と同じです。
特に切り替えの瞬間がポイントです。音符が変わる瞬間にストロークが乱れたり、テンポが揺れたりしないことが目標です。メトロノームを常に基準にしながら練習することで、この感覚が身につきます。
※ スピーカーでご使用の場合はマナーモードを解除してください
LESSON 1:4分・8分・16分の切り替え
メトロノームを流しながら、4分音符→8分音符→16分音符と音符の密度を切り替えます。テンポは変えず、密度だけが変わります。

- BPM 60〜70 からスタート
- 各音符を 4小節ずつ 維持してから切り替える
- スティッキング:オルタネート(R L R L…)
- 切り替えの瞬間にストロークが乱れないことに集中する。急いだり、もたついたりしていないかを確認する
- 慣れてきたら 4分→16分 と、間の 8分 を飛ばす切り替えにも挑戦する
切り替えの直前・直後の音が最もズレやすいポイントです。そこだけを取り出してゆっくり確認するのが効率的な練習法です。
LESSON 2:8分を途中で加える
4分音符を叩きながら、途中の拍に8分音符(裏拍)を1つずつ加えていきます。「4分の流れを崩さずに8分を挟み込む」感覚を養います。

- BPM 60 からスタート
- メトロノームのクリックを4分音符として、まず4分音符だけで安定させる
- 次に、1拍目の裏(&)だけに8分音符を加える。その1音を加えた瞬間に次の4分音符がズレないか確認する
- 問題なければ他の拍の裏にも順番に加えていき、最終的に8分音符の連続になる
- 切り替えのポイント:8分音符を加える瞬間に「急ぐ」感覚が出やすい。メトロノームのクリックに対して自分のストロークが揺れていないかを耳で確認しながら進める
LESSON 3:4分の途中で16分を加える
4分音符を叩きながら、途中に16分音符を1グループ(4連打)ずつ加えていきます。4分音符の流れを保ちながら、16分の細かさを自然に挟み込む感覚を養います。

- BPM 60 からスタート
- まず4分音符だけを安定させる
- 次に、1拍目だけを16分4連打(R L R L)に置き換える。その直後の4分音符がズレないか確認する
- 問題なければ他の拍にも16分を順番に置き換えていき、最終的に16分音符の連続になる
- 切り替えのポイント:16分4連打の最後の音から次の4分音符へ戻る瞬間が最もズレやすい。メトロノームを基準に、4分音符の着地が正確かを耳で確認しながら進める
STICK FLOW Vol.1 では、この音符切り替えとサブディビジョンの練習を体系的に収録しています。4分→8分→16分→3連符と段階的に進む構成で、リズムコントロールを基礎から定着させることができます。
テンポアップの考え方
「速く叩けるようになりたい」という場合、いきなり高速から練習する方法は非効率です。
推奨するのは 「今安定しているBPMの1〜2上から始める」 方法です。
- 今日の安定BPMを確認する(例:BPM 100)
- BPM 102 で練習する。3つの均等さを保てるか確認
- 保てたら BPM 104 へ。保てなければ 100 に戻る
毎回少しずつ積み上げる方が、長期的に速く、確実に上達します。「崩れているのに速い」より「崩れていないけど遅い」を選んでください。崩れた動きを繰り返すと、その崩れ方が体に定着してしまいます。
まとめ
シングルストロークは「全部の出発点」です。ここでの均等さの感覚が、アクセント・ルーディメンツ・フィルすべての土台になります。退屈に感じることもあるかもしれませんが、この練習を丁寧に積み上げた人とそうでない人では、半年後・1年後に大きな差が出ます。
毎日の練習の最初5分をシングルストロークのウォームアップに使うことをおすすめします。
教材リンク
STICK FLOW Vol.1 — シングルストローク
4分・8分・16分・3連符の音符切り替えからリズムコントロールを体系的に練習できる入門者向けワークブック。
アレクサンダー・テクニーク+ドラム
身体の使い方から演奏を根本的に見直す一冊。スティックコントロールの「力み」や「癖」を解消するヒントが詰まっています。
STICK CONTROL(George Lawrence Stone著)
当レッスンでも使用しています。シングル・ダブル・ミックスのパターンを体系的に練習できる定番テキスト。
SYNCOPATION(Ted Reed著)
当レッスンでも使用しています。シンコペーションを軸としたリズムトレーニングの名著。


