ドラムはダイエットになるのか——心拍数を測って検証してみた
基礎知識

ドラムはダイエットになるのか——心拍数を測って検証してみた

「ドラムって全身運動だから痩せるらしい」という話、どこかで聞いたことはありませんか? Apple Watchで実際に心拍数を測りながら演奏し、ジャンルやテンポによって運動強度がどう変わるかを検証してみました。

「ドラムって全身運動だから痩せるらしいよ」

そんな話をどこかで聞いたことはありませんか? 実際にドラムを始める動機のひとつに「運動不足の解消」「ダイエット」を挙げる方は少なくありません。

ただ、これがどれくらい本当なのか、数字で見たことがある人は少ないのではないかと思います。私自身も感覚的には「けっこう汗をかく」くらいの認識しかありませんでした。

そこで、Apple Watchを着けたままレッスンで演奏し、心拍数を実際に測ってみることにしました。

測り方について、先にお断りしておきたいこと

Apple Watchのワークアウト機能には「ドラム演奏」という種目は存在しません。今回は種目を「その他」に設定して計測しました。

「その他」は早歩き程度の有酸素運動を想定した種目です。つまり、ここから算出される消費カロリーや運動強度の数値は、ドラム演奏用に設計された測定ではなく、あくまで近似値・推定値だということをご理解いただいた上で読み進めてください。

正確な運動生理学の測定には呼気ガス分析などの専門的な機材が必要で、今回のような検証はそこまで厳密なものではありません。あくまで「ひとつの体験としての実測データ」として捉えていただければと思います。

Apple Watchのワークアウト記録:種目「その他」、15分16秒、平均心拍数95拍/分、消費カロリー81kcal

実際にレッスン中に記録した画面です。15分16秒のワークアウトで平均心拍数95拍/分、消費カロリーは81kcalという結果でした。

演奏ジャンルによって心拍数がはっきり変わった

検証していちばん面白かったのが、演奏する曲の音量・テンポ・ジャンルによって心拍数が段階的に変わったことです。

  • 小音量でスロー〜ミディアムテンポの曲:心拍数80前後
  • 中音量でミディアムテンポの曲:心拍数85〜90前後
  • 大音量・アップテンポなど、激しい演奏:心拍数100前後

同じ「ドラムを叩く」という動作でも、何を・どう叩くかによって身体への負荷がまったく違う。これは測ってみるまで、ここまではっきり数字に出るとは思っていませんでした。

運動強度(METs)の目安

心拍数の変化をもとに、AIとの対話を通じて大まかな運動強度(METs:安静時を1とした運動強度の指標)の目安を推定してみました。あくまで心拍数からの推定であり、正式な測定値ではない点にご注意ください。

演奏の傾向心拍数の目安METsの目安
小音量・スロー〜ミディアム80前後2.5〜3.0程度(軽い有酸素運動)
中音量・ミディアム85〜90前後3.0〜3.5程度
大音量・アップテンポ100前後4.0前後(早歩き〜軽いジョギング相当)

心拍数とMETsの対応関係は、年齢や心肺機能、日頃の運動習慣によって個人差があります。同じ心拍数でも、人によって実際の運動強度は変わってくるはずです。このMETsの目安は、あくまで「今回私が測った範囲での参考値」として見ていただくのがいいと思います。

なぜ音量やテンポで運動強度が変わるのか

考えられる理由はいくつかあります。

音量:大音量で叩くほど、腕を振る速度や力の入れ方が大きくなり、動員される筋肉の量が増える。

テンポ:速い曲ほど単位時間あたりの打数が増え、筋肉の収縮回数そのものが多くなる。

曲の激しさ:フィルインの多さやシンバルワーク、ダイナミクスの変化なども、全身運動としての負荷を押し上げる要因になっていると考えられます。

つまり、「ドラムを叩けば一律にダイエットになる」というよりは、『どう叩くかによって運動強度が変わる』というのが実態に近いのではないかと思います。

指導の現場から思うこと

ここで一点、指導者としてお伝えしておきたいことがあります。

「運動強度を上げるために、意図して力を入れて叩こう」とするのは、あまりおすすめしません。

アレクサンダー・テクニークの考え方では、力むこと自体が悪いわけでも、脱力すること自体がよいわけでもなく、その動きにとって『余分かどうか』が問題になります。音楽的に必要な音量・テンポで演奏した結果として心拍数が上がるのと、消費カロリーを稼ぐ目的で余分な力みを加えるのとでは、身体の使い方としてまったく別の話です。

今回の検証も、あくまで「普段どおりに演奏した結果、心拍数がこう変わった」という記録であり、「痩せるためにこう叩くべき」という提案ではありません。

一つの検証結果として

今回の測定はあくまで私一人の、一度の検証に基づくものです。ドラム演奏がダイエットに効果があるかどうかを保証するものではありませんし、効果の出方には個人差が大きく関わってくるはずです。

ただ、アップテンポで大音量の曲を演奏すると心拍数が早歩き〜軽いジョギング相当まで上がる、という実測は、「ドラムはそれなりに身体を使う楽器だ」という感覚を裏づける材料にはなりそうです。継続的に演奏する習慣があれば、日々の運動量の一部として意味を持つ可能性はあるのではないかと思っています。

今回の実測を単純に1時間分に換算すると、消費カロリーはおよそ300kcal前後。ご飯1杯分くらいに相当する計算になります。もちろんこれも今回の一検証をもとにした目安に過ぎませんが、しっかり練習した1時間でそれくらい身体を動かせていると考えると、上達しながらシェイプアップにもなる一石二鳥の時間だと言えるかもしれません。


「運動不足解消も兼ねてドラムを始めてみたい」という方は、まず好きな曲を、好きな音量とテンポで叩いてみることから始めてみてください。心拍数が上がる感覚そのものが、続けるモチベーションになることもあります。

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