スティッキング(右左の打ち分け)を考えるとき、多くの教材は「どちらの手を使うか」という機械的な配置に焦点を当てます。しかしEXITドラムレッスンのSTICK FLOW Vol.1では、もう一歩踏み込んだ視点を提案しています。
手に「役割」を与えるという視点です。
リードハンドとフォローハンド
2つの手を次のように定義します。
リードハンド:オンビート(拍の表)を担当する手。演奏の軸になる。
フォローハンド:リードハンドに追従し、サブディビジョンを埋める手。
単純に「右手でオンビートを叩く」という話ではありません。リードハンドの感覚が優位になり、フォローハンドがそれに従うという感覚的な優先順位の話です。
国内の教材では「ナチュラルスティッキング」と呼ばれることが多い概念に相当しますが、STICK FLOW Vol.1ではリードハンドが「演奏の軸」になるという概念に拡張して扱っています。
なぜ役割が重要なのか
シングルストロークの均等打ち(RLRL…)を練習していると、「右左を均等に」という意識が強くなります。これは基礎として正しい。しかし実際の演奏では、リズムには拍の「重さ」があります。
4/4拍子で8分音符を打つとき、オンビート(1・2・3・4)とオフビート(&)は音楽的に同じ重さではありません。
オンビートが軸として感じられることで、オフビートは「それに対する応答」として機能します。
リードハンドがオンビートの重さを体感として持っていると、フォローハンドのオフビートは自然にその隙間を埋めるようになります。これが演奏に軸が生まれるということです。
リードハンドはどちらの手か
多くの場合、右利きであれば右手がリードハンドになります。しかしこれは固定ではありません。
楽器の配置や曲の流れによって、リードハンドが入れ替わることがあります。これは次の記事「オルタネートスティッキング」で詳しく扱いますが、まずは自分の主な利き手でリードハンドの感覚を育てることを優先してください。
4つのパターンで身につける
リードハンド・スティッキングの練習は、次の4つのパターンを通じて感覚を育てます。4種類の楽譜とリズムを目と耳と手で同時に覚え、考えなくても自然に体が動く状態になることが目標です。




4つのパターンはそれぞれ、リードハンドとフォローハンドの関係が異なります。「どちらの手がオンビートにいるか」を感じながら繰り返すことで、手の役割の感覚が自然に体に入っていきます。
練習の進め方
- まず1つのパターンを楽譜と照らし合わせながら確認する。どちらの手がリードで、どちらがフォローかを把握する
- メトロノームに合わせてゆっくり繰り返す(BPM 60〜70)。「打っている」ではなく「乗っている」感覚を探す
- 楽譜を見なくてもリズムが再現できるようになったら次のパターンへ
- 4つすべてが自然に出せるようになったら、ランダムに切り替えながら練習する
楽譜・リズム・手の感覚が一体になったとき、リードハンドの概念は「知識」から「感覚」に変わります。急がず、1パターンずつ丁寧に定着させることが上達の近道です。
演奏の軸とグルーヴ
リードハンドの感覚が強くなると、演奏に「重心」が生まれます。
グルーヴとは、単に正確なタイミングではなく、拍の重さとその周辺の動きの関係から生まれます。リードハンドがその重さを担い、フォローハンドが呼応することで、演奏は機械的な均等打ちとは異なる表情を持ち始めます。
「叩いているのに何かグルーヴが出ない」と感じるとき、2つの手が同等の意識で打たれていることが原因であることが少なくありません。リードハンドとフォローハンドという視点で改めて演奏を見直してみてください。
まとめ
| 手の役割 | 担当 | 感覚 |
|---|---|---|
| リードハンド | オンビート(拍の表) | 演奏の軸。感覚優位 |
| フォローハンド | サブディビジョン(拍の間) | リードハンドに追従 |
この役割の非対称さを体感することが、このスティッキングの本質です。どちらの手も「同じように叩く」のではなく、意図的に異なる役割を持たせることで、演奏に軸が生まれます。
教材リンク
STICK FLOW Vol.1 — リードハンド・スティッキング
オンビートを担うリードハンドと、サブディビジョンを埋めるフォローハンドの役割を軸にした練習を収録した入門者向けワークブック。
アレクサンダー・テクニーク+ドラム
「リードハンドの感覚」を身体の使い方から掘り下げたい方に。意図と動きの一致を解説した一冊。
STICK CONTROL(George Lawrence Stone著)
当レッスンでも使用しています。シングル・ダブル・ミックスのパターンを体系的に練習できる定番テキスト。
SYNCOPATION(Ted Reed著)
当レッスンでも使用しています。シンコペーションを軸としたリズムトレーニングの名著。


